6月の花嫁
「模擬結婚式企画?」
「はい、6月はジュンプライドで結婚式をあげる方が多くいます。なので企画をしようかと」
佐伯のいきなりの企画には、いつも驚かされるが、急とは思えない企画力と実績を考えると頭が上がらない。
「で、何をするんだ?」
「これが企画書だ。」
私が手を加える必要性のないできの企画書に仕上がっている
「なぜ、もう出来上がっている企画書を私に見せるんだ?」
見ていた企画書を閉じ佐伯をじっと見る
「今回のコンセプトは男が選ぶ結婚式だ。主役は女性でなくあくまでも男性だ。実際御堂さんにも体験してもらいたい。時間がない行くぞ」
佐伯はいつも唐突すぎる。と文句をならべながらも用意された車へと乗り込む。
すると目の前の佐伯が
「あなたには、この企画を体験していただきたいので」
と言って御堂に耳栓と目隠しをした
あれから何時間立った
「御堂さん着きましたよ」
といきなり目隠しと耳栓がはずされ目の前は海が広がっていた
「一体ここはどこだ?」
「ここには俺と御堂さんしかいません。なので安心して下さい」
御堂が求めている答えなどお構い無しで、タキシードに着替えた佐伯が目の前に立っていた
「さて、俺一人が着飾っても仕方ありませんから…御堂さんにもふさわしい格好にならなければ…」
克哉は御堂のスーツを素早く脱がしていく。そして、抵抗もしないうちに、全裸にされる
「佐伯、何もパンツまで脱ぐ必要は無いんじゃないか?」
「何いってんですか御堂さん。あなたは花嫁ですよ?このまま御堂の身体を眺めていても良いが、せっかくの結婚式ですから…」
今度はウェディングドレスを着せていく
「あなたの白い肌に、よく似合う…」
そして目の前にある小さな教会で二人だけの結婚式
模擬結婚式なのに、衣装のせいか、隣の佐伯のせいなのか、身体中が熱くてたまらない
「せっかくですから、俺達も誓いのキスしておきましょう」
佐伯から何回となくしているのに、全く違う
模擬結婚式なため指輪の交換はなかったが、無事終了した
一生着ることがあるはずのないドレスは一人で脱ぐことができない。
「御堂さん、顔真っ赤にしてどうしたんですか?俺の格好に惚れ直したか?」
この男に頼むしかない訳だが…前の言葉にはなかったが、私がして欲しいことを佐伯はわかってわざと口にしていない…
「御堂さん、どうしたんですか?口に出してくれなきゃわからないじゃないか…」
口元が明らかに笑っている…
「これを…脱ぐのを…手伝っ…て…くれ」
「良くできました。」
と唇にキスをし、背中に手を回し素早く脱がす
「食べ頃のお前をこれだけ待ったんだ。今すぐ…」
何度も求めあう身体。
いつも以上に、熱い。
仕事の企画で来たはずなのにもう何も考えられない。
気がつくと見知らぬベッドの上で寝ていた。隣にいるはずの克哉はいない
「佐伯?」
という声かけに少し離れた所から足音が聞こえた。
「おはようございます。御堂さんじゃなかった…孝典さん。」
訂正され疑問に思っていると
「今日からあなたは御堂じゃなくて佐伯だ。」
御堂の頭は?マークで一杯になる。
「昨日孝典さんと一緒に結婚式したじゃないですか!」
まだ御堂の頭は理解出来ていない。
「昨日の企画書は仕事じゃなくて俺と孝典の結婚式の為のもの。仕事でなけりゃあんたはやらないだろ?」
頭では理解しようとしているが言葉がでて来ない。
「この国はまだ男同士の結婚は認められていない。だから、御堂孝典として今まで通り仕事をしろ。仕事の時まで束縛するつもりはない。だけど」
突然距離が縮まり、耳元で
「プライベートでは、佐伯孝典だからな」
頭は怒っているはずなのに、なぜか真逆の感情しかわいてこなかった