トキ経つにつれ  井吹×斉藤

芹沢さん暗殺程なくして
死を覚悟していた俺を援助してくれたのは、斎藤だった

そして血を流すことなく新選組から、姿を消した俺は京都、大坂、江戸と転々とした。

せっかく斎藤が助けてくれた命

最初のうちは、斎藤にこの恩を返したいいやもうがむしゃらに絵のことだけを頑張っていた

そんな俺のところに、斎藤の戦死の話が舞い込んでくる。

確かめるべく母成峠へ向かうと羅刹姿の斎藤が…

お互いの無事を確認しあうと、ここが戦場であることさえ忘れてしまう。

「井吹、生きていたのか?」
と訪ねる斎藤に、言葉ではなくからだが先に動きそっと口づける
あたたかい。紛れもなく生きている証。
「井吹、何をする。ここがどこだかわかっているのか?」

少し荒い口調で斎藤がいう
「ここがどこだかわかってないのはあんたのほうだろ」
と再び斎藤のくちづける

「ここは戦場なんだから、そんな大きな声を出したら、敵に見つかるぞ」

斎藤はそれ以上何も言わなかった。

ここは負け戦で明日にも降伏する場所、斎藤とこれ以上の行為はできない。

「見えない場所に深く残るものが…」

斎藤の口から思いもよらない言葉が出る。
井吹も最初は驚いた様子だったが、
頷き、見えない場所数ヶ所に深く口づけた。
「斎藤に必ず、絵を届けるから」
口づけの跡とその言葉を残し、俺は去った。


そして数年し、斎藤が斗南に移ったことを知った俺は、
絵を片手に斎藤に会いに行く。

会った瞬間、もう言葉などなくお互いに触れ合う

しかし雪が降っていることに気づくと、近くに小屋を探し、刀で戸を開かなくした
小屋と言っても外と大差ないほどに寒い。二人は互いに寄り添う

「斎藤の体冷たいな。今から俺が、あたためてやる」
「ああ」
井吹が触れたところ、舌で触れた部分が少しずつ熱を持っていく

お互いの体が外の冷たさと反対に、熱を増していく。
「井吹で俺をいっぱいにしてくれ。」
井吹と斎藤は重なりあう。
「井吹、俺はあの時お前を生かせて本当に良かった」
斎藤は何事もなかったように服に袖を通した。

そして井吹から約束の絵をもらい

「また、ちかいうちに会おう」
と口元に笑顔を浮かべそれぞれの場所へ向かっていった

 

 

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